今年2月22日(現地時間)に発表された、第87回アカデミー賞。主演男優賞でベネディクト・カンバーバッチとの英国男優対決を制し、見事オスカーの栄冠に輝いたのは、33歳の新星エディ・レッドメインでした。『博士と彼女のセオリー』(2014年)で難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)と闘う「車いすの天才物理学者」スティーヴン・ホーキング博士に扮した彼の渾身の熱演には、博士本人も絶賛を送っています。近頃発表された『ハリー・ポッター』シリーズのスピンオフ映画でも主演に抜擢され、今世界が最も注目する英国男優といっても過言ではないでしょう。
銀行家の父を持ち、英国屈指の名門イートン校ではウィリアム王子と同級生で、ホーキング博士と同じケンブリッジ大学を卒業した正真正銘のエリート。その華麗なる経歴もさることながら、俳優としての実力も折紙付きで、舞台では2009年にローレンス・オリヴィエ賞、2010年にトニー賞助演男優賞を受賞しています。映画『レ・ミゼラブル』(2012年)ではマリウス役で出演し、舞台経験で培った持ち前の歌唱力も披露して一躍脚光を浴びました。
ホーキング博士もマリウスも彼のイメージにぴったりの適役でしたが、それに勝るとも劣らない見事なはまり役を演じたのが、英国BBCのドラマ『テス』(2008年)です。文豪トマス・ハーディーの名作をテレビシリーズ化したこの作品で、彼は主人公の美しい娘テスと恋に落ちる純朴な青年、その名も「エンジェル・クレア」を演じています。その名の通り美しく清廉潔白で、しかしそれゆえに愛するテスを破滅へと追い込んでしまう青年エンジェルを完璧に演じ切った彼こそ、まさしく「天使」の名にふさわしい稀有な魅力を持った俳優といえるでしょう。
Part1. 色あせない少年らしさ
色白の肌にチャーミングなそばかすは、レッドメインの大きな魅力です。生い立ちから醸し出されるノーブルで洗練された雰囲気とは対照的な、ピュアであどけない印象が残るルックスは、30歳を過ぎた今でも全く色あせない「少年らしさ」を感じさせます。そのアンバランスな魅力が、「天使」の名を持つ青年エンジェルのどこか浮世離れした美しさを引き立てているのです。
Part2. 精悍でフェミニン
新作映画『The Danish Girl(原題)』で美しすぎる女装姿を披露し、世界中で大きな話題を呼んだレッドメイン。『テス』のエンジェルも、テスに愛を告白する真剣な眼差しは精悍ですが、柔らかい自然な表情や無邪気な笑顔はむしろキュートな印象です。口元を緩めて上目遣いで見上げる表情には、思わず「キュン」とさせられたファンも多いのでは。精悍さとフェミニンさ、相反する2つの魅力を併せ持つことも、レッドメインの大きな強みといえるでしょう。
Part3. 「瞳」で語る
オスカー俳優となったレッドメインの実力を物語るのが、とりわけ「目」の演技です。『テス』でも、彼の瞳は驚くほど雄弁かつ繊細に、多くの感情を巧みに映し出します。テスへの一途な愛、テスの過ちに対する動揺と軽蔑、テスを失った哀しみ。それら全ての感情が「目」の演技だけでも伝わってくる、といっても過言ではないかもしれません。
オスカーにも選ばれた確かな実力で人々を魅了する、俳優エディ・レッドメイン。しかし、彼が持つ少年らしさやフェミニンさは、それとは対照的などこか浮世離れした魅力で人々を惹きつけます。そのアンバランスな二面性こそ、彼ならではの稀有な魅力といえるでしょう。人々から愛される彼のまさしく「天使」のような魅力を、どうぞじっくりとお楽しみください。
『テス』放送スケジュール(全4話)
7月11日(土)深夜3:50~
7月12日(日)7:30 『テス』 #1〜4 一挙放送