英国テレビ文庫itvコレクション名探偵ポワロ徹底解説 名探偵ポワロ徹底解説TOP 英国テレビ文庫itvコレクション特設サイト ダベンハイム失そう事件

1990年作品
製作:ブライアン・イーストマン、監督:アンドリュー・グリーブ、脚色:デビッド・レンウィック
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:山田 悦司、日本語版翻訳:宇津木 道子

ダベンハイム失そう事件

出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
ヘイスティングス大尉 … ヒュー・フレイザー/富山 敬、安原 義人
ジャップ主任警部 … フィリップ・ジャクソン/坂口 芳貞
ミス・レモン … ポーリン・モラン/翠 準子
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シャーロッテ・ダベンハイム … メル・マーティン/喜多 道枝
マシュー・ダベンハイム … ケネス・コリー/納谷 悟朗
ジェラルド・ローウェン … トニー・マシューズ/家弓 家正
メイド … フィオナ・マッカーサー/松岡 洋子
メリット … リチャード・ビール/藤本 譲

あらすじ
著名な銀行家で金融業者のダベンハイム氏が消息を絶った。ポワロは、ジャップ警部と共にダベンハイム氏の行方を推理する。「煙のように消えた」というジャップに対して、ポワロは「人が消えるわけない」と部屋から一歩も出ないでこの事件を解決してみせると言い、期限一週間、聞き込みはヘイスティングスが行う条件でジャップ警部と勝負をする。やがてポワロは、警察の仮説を覆す、綿密に計画された事件の真相を暴きだす。

現場に行かない名探偵
謎解き主眼の本格ミステリにおける古典的な人間消失トリックを扱った一編。同様の仕掛けを使った他作家たちの有名な著作を未読の方でも、本ドラマは、集中して視聴すれば恐らく真相を見抜くのにさして苦労はないはず。この辺りが小説とTVの特性の違いと云えるでしょう。
今回は、部屋を出ることなく事件を解決できるかという勝負を挑まれたポワロ。ミステリの分野では、この様に現場に赴くことなく、与えられた材料により思考することのみで事件を解決する探偵のことを"安楽椅子探偵"とか"アームチェア・ディテクティブ"と称します。これまでご覧頂いて来た様に、彼は基本的には"調査に出掛ける"タイプですので、この類別には属さないものの、灰色の脳細胞による思考を旨とするキャラクターとして、本話ではそれに特化しても見事、面目躍如のポワロです。

現場に出掛ける探偵たち
例によって合理を奉る大言を吐くポワロに、ジャップは今回、5ポンドの賭け勝負を挑むという非常に分かりやすい対抗心を示します。ちなみに1930年代半ばの5ポンドを現在の日本の貨幣価値に置き換えると、大雑把に計算して5万円強といったところでしょうか。富豪のポワロはともかく、公務員のジャップには決して小さくない勝負です。
一方、ポワロの手足となり単身で奮闘するヘイスティングス。しかし、調査は自らの思うようにはかどらず散々な目に。とは云え、いかにも悪ノリしそうな彼のキャラクターのファンにとっては、"ちょっとした実験"のシーンをはじめ、必笑で必見のシーンが続きます。

マニア好みのゲスト
個性的な面立ちのダベンハイム役、ケネス・コリーは、スター・ウォーズのマニアにはおなじみの顔。作戦に失敗した提督をフォースによって処刑したダース・ベイダーが、新たに任じたピエット提督役として、『帝国の逆襲』(1980)、『ジェダイの帰還』(1983)に出演しています。
劇中のショーでマジックを披露しているのは、イギリスの有名なマジシャンであるパトリック・ページ。イリュージョニストに加え、マジック・コンサルタントとしてもクレジットされています。
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