英国テレビ文庫itvコレクション名探偵ポワロ徹底解説 名探偵ポワロ徹底解説TOP 英国テレビ文庫itvコレクション特設サイト 負け犬

1993年作品
製作:ブライアン・イーストマン、監督:ジョン・ブルース、脚色:ビル・クレイグ
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:山田 悦司、日本語版翻訳:宇津木 道子

負け犬

出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
ヘイスティングス大尉 … ヒュー・フレイザー/富山 敬、安原 義人
ミス・レモン … ポーリン・モラン/翠 準子
      ※   ※   ※
レディー・アストウェル … アン・ベル/小沢 寿美恵
リリー … エディー・アレン/土井 美加
ルーベン卿 … デニス・リル/川久保 潔
チャールズ … ジョナサン・フィリップス/平田 広明
ホレース・トレフューシス … ビル・ウォリス/麦人
ビクター・アストウェル … イアン・ゲルダー/有本 欽隆
ハンフリー・ネイラー … アンドリュー・シーアー/田中 秀幸
グラディス … ルーシー・デビッドソン/西村 未来
パーソンズ … ジョン・エヴィッツ/村松 康雄

あらすじ
ヘイスティングスは、友人のチャールズからゴルフに誘われ、ポワロも同行する。ポワロはチャールズのおじルーベンの所有するブロンズ像に興味を持っていた。彼は軍需ビジネスに利用できる新しい化合物の秘密書類を持っていたが、書類を保管していた研究室で火事騒ぎがあったり、自宅に持ち帰った後も使用人に盗み見されそうになったりと騒ぎが絶えない。そんな中、ルーベンは、チャールズと口論した翌朝、死体で発見される。

運転手&ナビゲイターの名コンビ
工場と、君臨する傲慢な経営者と云う、おなじみの取り合わせが軸となる本話。ヘイスティングスはゴルフ、ポワロは美術コレクションと、それぞれ好みのジャンルを接点に招かれたその経営者の邸には、腹に一物の家族や関係者ばかり。やがて、その経営者が死体となって発見され…と、これまでのシリーズの特徴を均等にまぶしたような小品です。
ルーベン卿は、戦争で儲けることしか頭にない業突く張りの憎まれキャラクターに徹底していますが、ポワロとのがっちりした絡みが見られないのがやや残念。静の見所である解決編に対し、怪しげなリリーとその男の逃亡を押さえんと、運転手&ナビのコンビで奮闘するヘイスティングス&ポワロの追走劇が、動の見所と言えるでしょう。

アール・デコの世界
本話におけるルーベン邸の居間や階段の意匠にも見て取れる様に、本シリーズでは1930年代の時代性を印象づける為に、家具や建築物をはじめとする美術で、アール・デコ調のデザインをを多々、採用しています。アール・デコとは、1910年代から1930年代にかけて主に欧米で流行したデザインの一形態で、幾何学図形のモチーフや原色対比などに独特の特徴が見られます。
本話に限らずこれまでも大半の回において、物語のビジュアルのどこかにアール・デコ調を見受けられたことでしょう。時にはストーリーとも相まって、独特の世界感に溢れる一編となった回も散見されるようです。

"トミー&タペンス"の今昔に出演
憎々しいルーベン卿を演じたデニス・リルは、ジェレミー・ブレット主演『シャーロック・ホームズの冒険』ファンならご記憶かも。ホームズに出し抜かれるセミ・レギュラー、ブラッドストリート警部役で同シリーズに数回出演しています。また、クリスティ作品の主人公トミーとタペンスが活躍する原作を、本シリーズと同じ制作プロダクションがドラマ化した1983年の『二人で探偵を』シリーズの1エピソードにもゲスト出演しています。
ルーベン卿の甥かつ、ルーベン卿殺しの容疑者であるチャールズを演じたジョナサン・フィリップス。超ヒット作『タイタニック』(1997)で端役ながら印象的な二等航海士ライトラーを覚えている方もいらっしゃるかも。そして彼の方は、2015年の新作トミー&タペンス作品となる、BBC版『PARTNERS IN CRIME』に顔を出しています。
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