英国テレビ文庫itvコレクション名探偵ポワロ徹底解説 名探偵ポワロ徹底解説TOP 英国テレビ文庫itvコレクション特設サイト チョコレートの箱

1993年作品
製作:ブライアン・イーストマン、監督:ケン・グリーブ、脚色:ダグラス・ワトキンソン
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:山田 悦司、日本語版翻訳:宇津木 道子

チョコレートの箱

出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
ジャップ主任警部 … フィリップ・ジャクソン/坂口 芳貞
      ※   ※   ※
デルラール夫人 … ロザリー・クラッチリー/鳳 八千代
ビルジニー・メスナール … アンナ・チャンセラー/鈴木 弘子
ガストン・ボージュ … デビッド・デ・キイザー/松岡 文雄
クロード・シャンタリエ … ジョナサン・ハケット/仲村 秀生
ザビア・サン・タラール … ジェフリー・ホワイトヘッド/阪 脩
ポール・デルラール … ジェームズ・クームズ/佐古 雅誉

あらすじ
ポワロはベルギーで叙勲されるジャップ警部に伴い、ブリュッセルを訪れる。警視総監になった旧友のシャンタリエと再会したポワロは、20年前の事件を思い出す。ポワロが警官だった頃、リベラル派の大臣ポール・デルラールが家族や知人たちとの食事後、好物のチョコレートを食べて急死した事件だ。ポワロはシャンタリエと捜査を始めるが、ブシェール警視によって打ち切りを命じられる。それでもポワロは決然と捜査を進めたのだった。

初披露、ベルギー時代
故郷ベルギーはブリュッセルの地を踏んだポワロが、イギリスへ亡命する以前、警察官として勤務していた時代に遭遇した事件に、真の決着をつける。本話は、『スタイルズ荘の怪事件』の様な完全なプリクエル編ではなく、時制は現在。過去の出来事を回想によって描きつつ、それから時を経た現在にて、物語は帰結します。
毒殺の謎の経緯もさることながら、初めて明かされるポワロの在ベルギー時代、警察官勤務の様子が見どころです。また、彼がほぼ常に身に付けている襟のブローチの曰く、そして若きその日に可憐な女性へ抱いた淡き思慕が、明らかになります。

精悍なる警察官。太った私立探偵
ベルギー警察に所属する警察官ポワロは、『スタイルズ…』より更に時代をさかのぼった日の姿。フサフサとはいかないまでも流石に今より豊かな頭髪も目に付きますが、何より若さを物語るのは、小柄ながらすっきりとした体型。
現在における"太っちょポワロ"は毎回、詰め物を使った扮装によって形作られています。つまり本話や『スタイルズ…』での精悍なラインが、ポワロに扮するデビッド・スーシェ氏本来の体型に近いというわけです。

勲爵士は旧き友
ポワロのベルギー入りは、叙勲を受けるジャップ主任警部に、夫人の代理として付き添ったという設定。恒例のジャップ夫人未登場ネタも兼ねています。
今回のジャップはいつもの様な本格的捜査はせず、活躍が認められベルギーの勲章を授与される件がサイド・ストーリーとなっています。ベルギー警察への再三の協力による貢献が評価されてとの話ですが、彼が警察官として相当に優秀な人材であるということと共に、ポワロのかつての同僚シャンタリエとも既に浅からぬ知己がある様などから、ポワロやベルギー警察との交流の歴史の深さを再認識させられます。親交の角度はかなり違うものの、ジャップもまたヘイスティングスに負けない、ポワロの"旧き友"なのです。
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