英国テレビ文庫itvコレクション名探偵ポワロ徹底解説 名探偵ポワロ徹底解説TOP 英国テレビ文庫itvコレクション特設サイト グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件

1993年作品
製作:ブライアン・イーストマン、監督:ケン・グリーブ、脚色:アンソニー・ホロウィッツ
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:山田 悦司、日本語版翻訳:宇津木 道子

グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件

出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
ヘイスティングス大尉 … ヒュー・フレイザー/富山 敬、安原 義人
ジャップ主任警部 … フィリップ・ジャクソン/坂口 芳貞
ミス・レモン … ポーリン・モラン/翠 準子
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エド・オパルセン … トレヴァー・クーパー/滝口 順平
マーガレット・オパルセン … ソーチャ・キューザック/谷 育子
ソーンダース … カール・ジョンソン/家弓 家正
グレース … エリザベス・ライダー/井上 瑤
アンドリュー・ホール … サイモン・シェパード/中尾 隆聖
セレスティーヌ … ハーマイオニ・ノリス/小宮 和枝

あらすじ
医師に静養を勧められたポワロは、ヘイスティングスとブライトンを訪れる。グランド・メトロポリタン・ホテルに到着したポワロたちは、演劇プロデューサーのエド・オパルセンから、妻マーガレット主演の舞台『豚に真珠』に招かれる。オパルセン夫妻が部屋に戻り、鍵をかけておいた宝石箱を開けると、舞台の売りで身に着ける予定の真珠のネックレスが消えていた。米国公演を控えるエドは、消えた真珠の捜索をポワロに依頼する。

短編期の終わり
ここまでで原作となる短編小説のほぼ全てを消化し、本シリーズにおける短編ドラマは本話がラストとなります。以降のシリーズは、残る長編を原作とし、あるいは『ヘラクレスの難業』の様に短編原作を組み合わせ翻案し、映像化した長編ドラマのみがラインナップされています。
短編ドラマ最後を飾る本話ですが、保管していた筈の棚から真珠を煙の様に消し去る盗難手段の細かな過程はともかく、状況から考えて犯人像は何となく想像がついてしまいますし、また見え隠れする怪しい人物の正体もドラマ描写の加減からすぐ見当がつき、謎解きの興が薄まってしまうのは残念なところ。明媚な観光地の舞台と、犯人はもとより狡猾なオパルセン夫妻をも向こうに回し、事件解決を図るポワロの駆け引きを、お楽しみ下さい。
なお、今回のコメディ・リリーフとなっている"ラッキー・レン"は本話における創作のようですが、しかし本話の様に、新聞紙上に掲載された人物を見つけて指摘すれば賞金が貰えるという企画は、この時代のイギリスで実際に行われたことがあるものだそうです。

レモンの怒り
今回は普通の休暇でなく静養を課せられたポワロ。後の『白昼の悪魔』でも同様の設定が見られますが、滞在地で事件に巻き込まれて結局はいつも通り奮闘してしまいます。お目付け役にヘイスティングスが任ぜられるのも予定調和ですが、こういう時の彼の無能ぶりに対するミス・レモンの当たりには結構、キツいものがあります。そう言えば『あなたの庭はどんな庭?』では彼女の留守中、その指示に従わずに業者へ現金支払いをしてしまったヘイスティングスに激怒していましたが、これらは、自分なら完璧にこなせるような責務をグダグダにしてしまう彼の無能さを腹に据えかねての怒り、なのでしょうか。

再登板キャスト
序盤でポワロに静養を勧めているのは、『イタリア貴族殺害事件』で事件の発端に居たホーカー医師で、キャストも同じアーサー・コックス。ホーカーはポワロのよき友人でもありますが、登場するのは『イタリア…』と本話のみ、以降に顔を見せる回はありません。
脚本家のアンドリュー・ホールを演じたサイモン・シェパードは、本シリーズ後盤の『マギンティ夫人は死んだ』にも出演、殺害された掃除婦マギンティ夫人の雇い主の一人であるレンデル医師を演じています。
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