英国テレビ文庫itvコレクション名探偵ポワロ徹底解説 名探偵ポワロ徹底解説TOP 英国テレビ文庫itvコレクション特設サイト メソポタミア殺人事件

2000年作品
製作:ブライアン・イーストマン、監督:トム・クレッグ、脚色:クライブ・エクストン
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:佐藤 敏夫、日本語版翻訳:宇津木 道子

メソポタミア殺人事件

出演:
ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
ヘイスティングス … ヒュー・フレイザー/安原 義人
      ※   ※   ※
ライドナー博士 … ロン・バーグラス/小川 真司
ライドナー夫人 … バーバラ・バーンズ/土井 美加
アン・ジョンソン … ディナ・スタブ/小宮 和枝
ラヴィニー神父 … クリストファー・ハンター/池田 勝
リチャード・ケアリー … クリストファー・ボウエン/小杉 十郎太

あらすじ
バグダッドを訪れていたポワロは、偶然、甥を訪ねて近くに来ていたヘイスティングスに誘われ遺跡の調査隊の宿舎を訪れた。そこでポワロは調査隊のリーダー、ライドナー博士の妻ルイーズから命を狙われていると打ち明けられる。ポワロが粗末な宿舎に音をあげてバグダッドに戻ると、ルイーズが殺害されたとの報せが入る。調査を進める中で、さらなる殺人事件が発生。博士を慕う助手のジョンソンは死の直前に「窓」と言い残す。

真実の端緒
本話は、クリスティ作品のヴァリエーションのひとつと言える遺跡・発掘にまつわる物語。遺跡の様子や発掘の詳細などが興味深く描かれています。事件の経緯は例によって十重二十重に仕組まれたプロットですが、最初の殺人トリックは既作品のものの応用と考えるとさほど難しくなく、解ければ少なくとも真犯人の見当はつくはずです。
ポワロをバグダッドへ向かわせるきっかけとなったロザコフ伯爵夫人は、ポワロが敬意と憧れを抱く女性。その経緯は短編ドラマ『二重の手がかり』にて綴られています。最終話直前の『ヘラクレスの難業』では、キャストはキカ・マーカムからオーラ・ブレイディに変更されるものの、彼女が再登場を果たします。

運命の友
前話『白昼の悪魔』と本話の二編から成る第8シリーズは、このドラマシリーズを製作し続けて来たブライアン・イーストマンの最後の担当作品となります。
また、欺かれた事実から真実を組み立て直す術に長けることはなかったものの、物事や人物を極めてシンプルに捉える純粋な視点と感性がしばしば、袋小路に陥ったポワロを助けて来たヘイスティングスとも、ここで長きのお別れです。ただ彼は、原作において、第一話『スタイルズ荘の怪事件』と対をなす最終話に不可欠な人物であるだけに、そのドラマ化に彼が果たして登場するのか、それとも、ファンの見も知らぬ別人物が"ポワロの長年の友"設定の顔をして出てくるのか?長い別れの間、ファンはやきもきしてその行く末を待ち続けましたが、願いは無事、報われることとなりました。最終第13シリーズでは、『ビッグ・フォー』にてレギュラー4人が再び顔を合わせた後、ヘイスティングスは、この長き物語の終着点『カーテン ~ポワロ最後の事件~』で再々登場を果たします。原作通り、ポワロの運命に大きく関わる人物として。

最後のドラマタイズ
ブライアン・イーストマンと共に作品設定を構築し、主要な回を数多く手がけたメイン・ライターのクライブ・エクストンの担当も本話が最後となります。なお、本話までのライターのクレジットはDramatized byでしたが、次話からはScreenplayと銘打たれています。
恐怖におののくライドナー夫人役のバーバラ・バーンズは、『消えた廃坑』にも出演しており、夫を心配し心を痛める健気なレスター夫人役を演じています。
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