英国テレビ文庫itvコレクション名探偵ポワロ徹底解説 名探偵ポワロ徹底解説TOP 英国テレビ文庫itvコレクション特設サイト ナイルに死す

2004年作品
製作:マーガレット・ミッチェル、監督:アンディ・ウィルスン、脚本:ケビン・エリオット
日本語版プロデューサー:里口 千、日本語版演出:蕨南 勝之、日本語版翻訳:宇津木 道子

ナイルに死す

出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
      ※   ※   ※
レイス大佐 … ジェームズ・フォックス/阪 脩
ジャクリーン・ド・ベルフォール … エマ・マリン/小島 聖
サイモン・ドイル … JJ・フィールド/関 俊彦
リネット・リッジウェイ … エミリー・ブラント/森永 明日夏
ミス・ヴァン・シュワイラー … ジュディ・パーフィット/大方 斐紗子
コーネリア・ロブソン … デイジー・ドノヴァン/藤本 喜久子
アラートン夫人 … バーバラ・フリン/牧野 和子
ティム・アラートン … ダニエル・ラパイン/難波 圭一
アンドリュー・ペニントン … デビッド・ソウル/佐々木 梅治
サロメ・オタボーン … フランシス・デ・ラ・トゥーア/巴 菁子
ファーガスン … アラステア・マッケンジー/小山 力也
ベスナー医師 … スティーヴ・ペンバートン/山野 史人

あらすじ
ポワロは休暇中に美しき大富豪リネットと知り合う。彼女は夫サイモンの元婚約者ジャクリーンから付きまとわれ嫌がらせを受けていた。ポワロの忠告も虚しく、ナイル・クルーズ中にリネットが殺害される。ところが犯行を最も疑われるジャクリーンには、サイモン銃撃騒動を起こした為に夜通し見張りが付いていたという鉄壁のアリバイがあった。さらにポワロが調査を進めるなか、事件の謎を解く鍵を握る乗客が次々と殺されてしまう。

寂寞のポワロ
恒例の旅先編による大作。豪奢かつ変化が多い内容だけに見所は事欠かないでしょうが、"大転換"後のポイントをひとつ。失意の筈のジャクリーンが示す"愛が全て"という執着に対し、ポワロが「欠けておりました…それが私の人生には」と語る場面。これまでの諸作に皆無とは言わないまでも、プライドの塊であるポワロがこうした寂莫の心情を吐露する様は、ほとんど見られなかった描写と言えるでしょう。

受け継がれる名役
風光明媚、豪華ツアー、ヴァラエティに富む登場人物といった旅先ものの設定は、いかにも映画向きなのでしょう。この原作は、本話のおよそ四半世紀前、既に『ナイル殺人事件』(1978)として劇場映画化されています。
同作は1974年の『オリエント急行殺人事件』の成功で人々の眼に焼きついたポワロ人気を引き継ぐ一作で、主演ピーター・ユスティノフはこれにより、前者の主演アルバート・フィニーを凌ぐポワロの定番俳優となり、映画とドラマ合わせて6作品で、この偉大な探偵を演じました。

メイン・キャラクター同士
レイス大佐は、4作と数こそ少ないものの、主人公としても活躍するクリスティ小説のメイン・キャラクターの一人。更に、本話原作と、『ひらいたトランプ』ではポワロとの共演をも果たしています。しかしながら本ドラマシリーズでの後者は、アレンジされ別名の大佐となっているのは、何とも残念なところです。

老練と精悍
レイス大佐を演じたのは『素晴らしきヒコーキ野郎』(1965)、『インドへの道』(1984)などの大作が印象深い名優ジェームズ・フォックス。近年も『チャーリーとチョコレート工場』(2005)やロバート・ダウニー・Jrの『シャーロック・ホームズ』(2009)で顔を見せています。
管財人ペニントン役は、'70年代のいわゆるCOPドラマに親しんだ人には『刑事スタスキー&ハッチ』のハッチことケン・ハッチンソン刑事役でおなじみのデビッド・ソウル。その他、『ジョニーは戦場へ行った』(1971)、『ダーティハリー2』(1973)など若き日の名作出演と、貫禄のペニントンに扮した本話との間の中年期には、ユスティノフ=ポワロ映画の一本である『死海殺人事件』(1988)にも出演しています。
PDFで印刷
  • 前へ
  • 次へ