女学園に独特の難
４人目となるプロデューサー、カレン・トラッセルに引き継がれて製作された本話は、ポワロが名門女子校を舞台に活躍する物語。タイトルは劇中でも語られている通り、周囲に和しない異質性、あるいは必ずや悶着が起こる必然性を意味するそうです。暗躍する謎の人物に学園の教師らが襲われていく展開に、異国の革命と諜報員までも絡み、クリスティ流冒険サスペンスのテイスト香る一編となっています。
学園に入り込んだ謎の人物の正体、連続する事件の背景が一筋縄でくくれぬことも、いつもながら興味深いプロットですが、この物語は本来、女性ばかりの環境にある独特な"難しさ"を描いたものという分析は、興味深い指摘です。サディスティックな体育教師スプリンガー、その反転像の如き女生徒スイ・タイの物憂い視線はその象徴のようでもありますし、事件を構成する複層した情念のひとつは、確かにそこに根を張るものと言えるでしょう。

女生徒のなかのポワロ
物語も中盤を過ぎてから、宝石を発見したジュリアがロンドンまで来て助けを請う依頼に応じてポワロが学園へ足を運ぶ原作とは異なり、ドラマのポワロは知己である校長から頼まれ序盤からほぼ全編にわたってメドウバンク校に滞留します。こうして女学園を闊歩するポワロもまた、言ってみれば鳩のなかの猫であるわけですが、そうした意味での騒動は特に起こりません。折角のドラマ・アレンジなのに、女生徒や女教師たちとポワロのミスマッチなユーモアが描かれなかったのは、何とも残念です。

エキゾチックな魅力
エキゾチックなアジア系の女生徒スイ・タイに扮しているのは、大ヒット映画『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』（２００５）等を御覧の方にはハリーの初恋の相手チョウ・チャン役でおなじみの、ケイティ・リュン。父親が英国人で母親が中国人ですが、香港から移民したため彼女自身はスコットランド出身だそうです。 押しが強く王女相手でも遠慮なしの寮母ジョンスンに扮しているキャロル・マクレディは、『エンドハウスの怪事件』ではエンドハウスの別棟に住む狡猾なクロフト夫妻の、妻ミリー役を好演。表裏の激しい言動が何とも強烈な役柄でした。