寺尾聰が主演した、小泉堯史監督による時代劇。黒澤明監督が山本周五郎の短編をもとに書いた遺稿を映画化。剣の達人が周囲にもたらすささやかな波紋を人情味豊かに描いた。
享保時代。剣の達人でありながら人の良さが災いして思うように仕官ができず、妻のたよとともに諸国を渡り歩く武士の三沢伊兵衛。長雨である川を渡れず、宿場町の安宿に足止めを食っていた伊兵衛はある日、同じ宿の貧しい人々の鬱々とした気分を和ませようと、妻に禁じられていた賭け試合で金を工面して彼らにごちそうを振る舞う。やがて地元藩主・永井和泉守重明は伊兵衛に目をつけ、彼に剣術指南番の仕官の話を持ちかけるが……。