アカデミー賞で作品賞、監督賞など4部門に輝く『ディパーテッド』などで知られるマーティン・スコセッシ監督。アメリカ映画界に長年君臨する巨匠が初めて連続テレビシリーズをプロデュース。自らメガホンを執った第1話では、巨額の製作費を投じたと言われる“映画を超えるテレビドラマ”『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』。
アメリカで放送されるなりたちまち大絶賛され、ゴールデン・グローブ賞では作品賞を受賞。エミー賞でも最多8部門に輝いた。1920年代の禁酒法時代、歓楽街を牛耳った実在の政治家イーノック・ジョンソンをモデルに、華麗にして壮絶なストーリーを展開。
ラスベガスよりも先に繁栄を迎えていた一大歓楽街アトランティック・シティで、飽くなき野望にかられる男たちと、その激しい奔流に巻き込まれる女たちの愛憎劇を描いたドラマは、見る者をその世界へと引きずり込む強烈な“魔力”を放っている。主人公イーノック・“ナッキー”・トンプソンを演じるのは、映画「ファーゴ」などで知られる演技派スティーヴ・ブシェミ。マイケル・ピット、ケリー・マクドナルドら実力派出演陣も充実。全米HBO局で13年9月から第4シーズンが放送予定の人気ドラマだ。
1920年。全米で施行された禁酒法を背景に、大胆不敵なやり口で勢力を拡大する大物イーノック・“ナッキー”・トンプソン。当時「世界の歓楽地」とまで呼ばれたアトランティック・シティで郡の収入役という地位でありながら賄賂や酒の取引など、ありとあらゆる不正で私腹を肥やす一方、芯が一本通った人間性を持ち合わせる、謎多き人物だ。そんなナッキーの手下である野心家のジミー、若きカポネやルチアーノなどギャング達の思惑が絡み合い事態は思わぬ方向へ。さらに禁酒法取締局もナッキーとその牙城であるアトランティック・シティの監視を開始。多彩な顔ぶれが集まったこの“帝国”は、激動の時代の中、どんな運命を迎えていくのか……?
1920年代のアメリカといえば、映画『シカゴ』や『華麗なるギャツビー』などでみられるとおり、きらびやかさと陰鬱さが同居する時代。第一次世界大戦が終わり、アメリカ経済は空前の大繁栄をとげ、世界経済の中心はロンドンからニューヨークのウォール街に移った。同時に芸術や文化が花開き、ベーブルースによる野球人気やチャップリンの映画、音楽ではジャズ、建築ではアール・デコが時代を華やかに彩った。
そして『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』の舞台背景にもなっている禁酒法が施行されたのもこのころ。本来は社会問題を軽減するために施行された法律だが、もぐり酒場が蔓延し、酒の密輸、密造、密売がギャングの資金源となった。ドラマでも、今も名を残すギャングたちが実名で登場し、利権をめぐる抗争を繰り広げる。
一方、1920年代は女性の社会進出が進んだ時代だった。自家用車やラジオに加え、洗濯機、冷蔵庫等の家電製品が普及すると、家事労働から解放された女性の社会進出・政治参加が進む。そして、女性たちはファッションや娯楽など流行にも敏感になっていった。ドラマではそうした社会背景もしっかりと描かれている。