英国テレビ文庫itvコレクション名探偵ポワロ徹底解説 名探偵ポワロ徹底解説TOP 英国テレビ文庫itvコレクション特設サイト 死との約束

2008年作品
製作:カレン・トラッセル、監督:アシュレイ・ピアース、脚本:ガイ・アンドルーズ
日本語版プロデューサー:武士俣 公佑、間瀬 博美、日本語版演出:佐藤 敏夫、日本語版翻訳:中村 久世

死との約束

出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
      ※   ※   ※
ボイントン卿 … ティム・カリー/廣田 行正
サラ … クリスティーナ・コール/魏 涼子
レイモンド … トム・ライリー/浅野 雅博
レディー・ボイントン … シェリル・キャンベル/立石 凉子
ジニー … ゾーイ・ボイル/加藤 忍
キャロル … エマ・カニフェ/安奈 ゆかり
カーバリ … ポール・フリーマン/穂積 隆信
シスター・アニエシュカ … ベス・ゴダード/幸田 直子
コープ … クリスチャン・マッケイ/根本 泰彦
レナード … マーク・ゲイティス/大滝 寛
ジェラール医師 … ジョン・ハナー/世古 陽丸
セリア・ウェストホルム卿夫人 … エリザベス・マクガヴァン/堀江 真理子

あらすじ
ポワロは、ボイントン卿のシリアの遺跡発掘現場を訪れていた。そこには卿の再婚した妻とその子供たちや卿の息子も顔を揃えていた。心に闇を抱える夫人の子供たちや父の発掘を快く思わない息子、夫人の横柄な態度を快く思わない見学者たちによって不穏な空気が漂う中、夫人が殺害される。さらに夫人の末娘が襲われ、ばあやも遺体で発見される。しかしポワロは、それぞれの言動から秘密を明らかにし、遂に犯人に辿りつく。

姿を見せたボイントン卿
おなじみ、遺跡の地でポワロが事件に遭遇する趣向の物語。ロケの美しさと、舞台の徹底した作りも見応えある一編です。先代とも言うべきピーター・ユスティノフが、当たり役ポワロに扮した映画・TV合わせて6作品の最後となる『死海殺人事件』(1988)も、本話と同じ原作の映画化です。
遺跡に集まり現場に居合わせ容疑者となる人物たちは、原作には出ていなかったりドラマでは削られるなど増減がありますが、その最たるものはボイントン卿でしょう。原作のボイントン夫人は未亡人、つまりボイントン卿は登場していないのです。

名探偵のぼやき
原作小説は、「彼女を殺してしまわなきゃいけない」とキャロルに話すレイモンドの言葉で始まり、冒頭から読者に強烈な印象を残します。それが寝しなのポワロの耳に漏れ聞こえるシークエンスは、セリフこそ微妙に違いますが、ドラマ序盤で生かされています。
これを受けてか、ボイントン夫人の死に対する悲鳴を耳にしたポワロが「始まったか」とひとりごつのは、名探偵の皮肉な身上に対するぼやきのようにも聞こえ、少し笑いを誘います。

ゲスト出演の才人たち
暴君のようなボイントン夫人に扮する女優シェリル・キャンベルは、およそ30年前にアカデミー賞作品賞に輝いた名作映画『炎のランナー』(1981)で、主人公の一人エリックの生き方を気にかける聡明な妹ジェニーを演じた才女。腹に一物のカーバリ大佐に扮するポール・フリーマンは、やはり30年ほど前に『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981)でインディと五分に渡り合うライバル考古学者ベロックを闊達に演じました。ポワロの旧知ジェラール医師に扮するジョン・ハナーは、『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』(1999)及び続編諸作のヒロイン、エヴリンのお調子者だが憎めない兄ジョナサン役が印象的。
どことなく謎めくシスター・アニエシュカに扮するベス・ゴダードは、本シリーズ『なぞの遺言書』では先進的な才媛バイオレット嬢を溌剌と演じていました。ボイントン卿の鼻持ちならない連れ子レナードに扮しているのは、俳優・脚本家・小説家としても活躍するマーク・ゲイティス。目新しいところではTVシリーズ『SHERLOCK(シャーロック)』でマイクロフト役と脚本も担当、のみならず実は作品の製作総指揮の一人に名を連ねるマルチな才人。本シリーズでも、『鳩(はと)のなかの猫』『ハロウィーン・パーティー』『ビッグ・フォー』の脚本を執筆しています。
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