英国テレビ文庫itvコレクション名探偵ポワロ徹底解説 名探偵ポワロ徹底解説TOP 英国テレビ文庫itvコレクション特設サイト 複数の時計

2009年作品
製作:カレン・トラッセル、監督:チャールズ・パーマー、脚本:スチュワート・ハーコート
日本語版プロデューサー:武士俣 公佑、間瀬 博美、日本語版演出:佐藤 敏夫、日本語版翻訳:中村 久世

複数の時計

出演:
エルキュール・ポワロ … デビッド・スーシェ/熊倉 一雄
      ※   ※   ※
コリン・レース大尉 … トム・バーク/浜野 基彦
シーラ・ウェブ … ジェイム・ウィンストーン/山本 雅子
ノラ・ブレント … シニード・キーナン/佐藤 あかり
ミス・マーティンデール … レスリー・シャープ/亀井 芳子
ミス・ペブマーシュ … アンナ・マッセイ/谷 育子
ハードカッスル警部 … フィル・ダニエルズ/浦山 迅
ジェンキンス巡査 … ベン・ライトン/茶花 健太
ヘミングス夫人 … ビーティ・エドニー/斉藤 貴美子
レイチェル・ウォーターハウス … アビゲイル・ソー/水野 ゆふ
マシュー・ウォーターハウス … ガイ・ヘンリー/真矢野 靖人
ハムリング提督 … ジェフリー・パーマー/松永 英晃
バル・ブランド … テッサ・ピーク=ジョーンズ/渡辺 真砂子
ジョー・ブランド … ジェイソン・ワトキンス/後藤 哲夫
クリストファー・マバット … スティーブン・ボクサー/樋渡 宏嗣
マリーナ・ライバル … フランシス・バーバー/堀越 真己

あらすじ
ポワロは、旧友レース大佐の息子コリンからある事件の話を聞かされる。不審な動きをした同僚を尾行していた先で亡くなった恋人が遺したメモ、盲目の女性宅で発見された男の遺体、偽の秘書派遣依頼 ― 事件が海軍の機密漏えいに関連すると考える彼は、ポワロに調査を依頼した。さらに秘書紹介所に勤める女性と死んだ男の妻だと名乗り出た女性も殺害されてしまう。調査を進めるポワロは、事件周辺の人々の話の中から真相を導き出す。

諜報戦+複数の時計
世界情勢を左右する諜報戦を縦糸、複数の時計をはじめとする奇妙なシチュエーションの殺人に巻き込まれた女性の運命を横糸に描くサスペンス。クリスティ作品の例に漏れず、見かけ通りではない複層する悪意が絡んで構成された物語ですが、その絡み具合は、諸作の中ではどちらかと言えばさほど複雑な方ではないでしょう。混迷を極める奇妙な殺人の真相も、解き明かされてみれば、ポワロの指摘通りシンプルなからくりです。

スウェーデンではなくフィンランド
序盤でポワロが鑑賞している推理劇は、今回は姿を見せないオリヴァ夫人の作。劇中のスベン・ヤルセンが御覧の通り、特徴的なあご髭、他国と間違えられる外国人探偵であることは、ポワロを意識した設定に間違いないでしょう。
オリヴァ夫人の描くプロットに対しポワロはかなり批判的ですが、引き合いに出されるギャリー・グレグソンは架空の作家。ちなみに、本話の原作では刺激的な事件に乏しくなった現状をはかなむポワロが探偵小説に傾倒し、様々なミステリの評論を展開するくだりがあるのですが、ドラマでは割愛されたようです。

猫大好きおばさんの前身
被害者の妻と証言する胡散臭いマリーナ・ライバルに扮しているのは、『ベールをかけた女』の麗しき依頼者レディー・ミリセントを演じた女優フランシス・バーバー。恰幅のいい猫好きのヘミングス夫人に扮するビーティ・エドニーは、ギャップある外見からは思い出しづらいでしょうが、『スタイルズ荘の怪事件』でヘイスティングスの親友ジョン・カベンディッシュの妻メアリを演じていた女優です。
ポワロの辣腕を買うハムリング提督に扮するジェフリー・パーマーはその姓の通り、本話や次々話『ハロウィーン・パーティー』の監督チャールズ・パーマーの父親。ロマンスの主人公コリンに扮しているトム・バークも姓の通り、ジェレミー・ブレット主演『シャーロック・ホームズの冒険』初代ワトスンを務め、本シリーズでは『ヒッコリー・ロードの殺人』でスタンリー卿を演じたデビッド・バークの息子。ちなみにその妻でありトムの母親アンナ・カルダー=マーシャルも、本シリーズ『葬儀を終えて』にモード・アバネシー役で出演しています。盲目のミス・ペブマーシュに扮している大御所女優アンナ・マッセイは、サスペンス・ファンならヒッチコック監督の『フレンジー』(1972)で主人公の恋人バブス役と聞けばご記憶かも。私生活では一時期、ジェレミー・ブレットと結婚していました。
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